卵管に水が溜まっている?
卵管留水腫とは
卵管留水腫とは、何らかの原因によって卵管内に液体が溜まり、卵管が腫れる病気です。この液体は通常の卵管分泌液や体液が排出されずに溜まることで起こり、卵管の正常な働きを妨げることがあります。
卵管留水腫があると、卵管采による卵胞のピックアップを妨げるため、不妊の原因になることがあります。また、体外授精における妊娠率にも影響を及ぼすと言われています。
卵管留水腫の症状チェック
卵管留水腫に伴う症状は以下のようなものが考えられます。
- 大量のおりもの(サラサラした赤褐色・茶褐色)
- 不正出血
- 腹痛、発熱(感染を伴う場合)
特徴的な症状に大量のおりものが挙げられますが、女性ホルモンの影響で増加するため、排卵期周辺に出やすい傾向があります。
一方で、腹痛や発熱といった強い自覚症状は、卵管内の液体に感染が生じない限りはあまり現れません。
卵管留水腫の原因
卵管留水腫の原因は、感染、炎症、子宮内膜症など、さまざまです。
ごく稀に、先天的な卵管の構造異常によるケースも見られます。
骨盤内炎症
クラミジア感染症、細菌性膣炎などに伴う骨盤内の炎症により、卵管の内側や周囲が腫れ、卵管の通り道を障害することがあります。炎症の慢性化によって卵管が塞がり、液体が卵管内にたまってしまうと、卵管留水腫の原因になります。
手術や炎症
子宮・卵管の手術後に生じた癒着、卵巣炎・腹膜炎などが卵管の動きを妨げ、卵管内の液体の貯留、および卵管留水腫を引き起こすことがあります。
先天性の卵管の構造異常
ごく稀に、卵管が途中で屈曲している等の先天的な構造異常が原因となり、卵管留水腫が生じることがあります。
卵管留水腫の検査方法
超音波検査
卵管留水腫の場合、卵巣や子宮の付近にソーセージ状の影が認められることが多くなります。
ただし、月経周期によっては、また大量のおりものが出た後などには、認められないこともあります。
子宮卵管造影検査
造影剤を注入し、子宮・卵管のX線による撮影を行います。卵管の閉塞、液体の貯留の状態などを確認します。
正確な診断のためには、造影剤の注入後、24時間以上が経過してから再撮影を行う必要があります。
卵管留水腫の重症度チェック
卵管留水腫は、卵管に液体がたまることで卵管が膨らんだ状態です。重症度によって症状や治療方針が異なるため、医師による的確な診断・検査が大切です。
主なチェックポイントは以下の通りです。
- 卵管の大きさ:直径が1cm以上の場合は中等度〜重度と言われます
- 両側性か片側性か:両側の場合は不妊のリスクが高まります
- 卵管の壁の厚さや液体の性状:炎症や感染の有無を判断し、重症度を確認します
- 症状の有無:下腹部の違和感や圧迫感、月経異常などお伺いします
卵管留水腫の治療方法
卵管切除術
卵管をすべて切除します。手術後は、体外授精における妊娠率の向上が期待できます。
特に、反復性の卵管留水腫や感染のリスクが高い場合に行われることが多い手術です。
卵管開口術
卵管に小さな切開を加え、卵管内に溜まった液体の腹腔への排出を促す手術です。
卵管自体を温存するため、将来的に自然妊娠を目指す場合に選択されることがあります。ただし、再発の可能性もあるため、経過観察が重要です。
卵管閉塞術
卵管内の液体の子宮側への逆流を防ぐため、卵管と子宮を切離・閉塞させる手術です。自然妊娠は難しくなりますが、体外受精(IVF)の妊娠率向上に効果があるとされています。
卵管留水腫でも妊娠はできる?
まず、卵管留水腫はピックアップ障害を伴うため、自然妊娠・タイミング法・人工授精の妊娠率を低下させます。
また同時に、体外授精の妊娠率もほぼ確実に下げます。
不妊治療の種類を問わず、治療(手術)を行った方が妊娠率は向上すると言われています。一方で、治療をしない場合も、妊娠ができないわけではありません。
妊娠や不妊治療についての患者様のご希望、症状の有無や程度、年齢などを考慮して、治療を行うかどうか、また行う場合はどの治療を選択するか、一緒に考えましょう。


