卵管開口術とは
卵管開口術とは、不妊の原因となる卵管の閉塞・狭窄を改善する治療です。卵子と精子の通り道を確保することで、妊娠率の向上が期待できます。
また、卵管留水腫がある場合には、その治療として腹腔鏡による卵管開口術が第一選択となります。但し、部位、程度により様々な治療の選択肢があり、要相談になります。
卵管開口術の対象となるケース
卵管開口術を検討するのは、主に以下のようなケースです。
卵管閉塞(卵管狭窄)
卵管が詰まったり、狭くなったりした状態です。
卵管は、子宮の左右にある細い管のことを指し、精子と卵子が出会う場所になります。また、卵管から出てきた卵子を子宮まで運ぶ役割も担っています。
卵管閉塞があると、受精および着床が妨げられます。また、卵管妊娠(卵管で着床してしまうこと)の原因になることがあります。
卵管閉塞の原因としては、クラミジア感染症等の性感染症、子宮内膜症、腹腔内の炎症、卵管周囲の癒着などが挙げられます。
なお、卵管閉塞は基本的に無症状であり、不妊治療前に行う検査などで発見されるケースが多くなります。
卵管留水腫
卵管留水腫(卵管留水症)とは、卵管液の貯留によって卵管が拡張した状態を指します。
ピックアップ障害などを引き起こし、不妊につながることがあります。また、子宮内膜の着床能を低下させる等の指摘もあります。
卵管留水腫の治療において、第一選択になるのが卵管開口術です。部位、程度により卵管切除、卵管結紮を行い体外受精治療を優先する場合もあります。
卵管留水腫の原因としては、クラミジア感染症などの性感染症、骨盤内手術、子宮内膜症などが挙げられます。
症状としては、おりものが多くなる・赤褐色のおりものが出る、不正出血、下腹部痛、発熱などがあります。
卵管開口術の方法・種類
卵管開口術には、以下のようないくつかの方法があります。
患者様お一人おひとりのお身体の状態に合わせて、治療法を選択します。
通水検査(通水法)
通水検査とは、子宮内に造影剤や生理食塩水を注入することで、卵管の通過性を評価する検査です。
軽度の狭窄であれば、この検査自体が治療となり、狭窄を改善できることがあります。
局所麻酔や鎮痛剤により、ほとんど痛みなく検査(治療)を実施することが可能です。
卵管形成術
(選択的卵管通水法)
卵管形成術とは、狭窄部・閉塞部をカテーテルやバルーンで拡張する方法です。軽度~中等度の子宮側、近位閉塞疑いに適しています。
手術時間は比較的短く、日帰りでの実施が可能です。
卵管鏡下卵管形成術
卵管鏡下卵管形成術とは、卵管鏡(細い内視鏡)を卵管内へと挿入し、閉塞や癒着を直接観察しながら治療する方法です。中等度以上の閉塞であっても対応が可能です。
卵管内の状態を観察することができるため、妊娠率の予測、追加治療の必要性の見極めなどにも役立ちます。
卵管鏡下卵管形成術が必要になった場合には、提携病院をご紹介します。
卵管開口術の流れ
1問診・診察・検査
問診、医師による診察の上、卵管造影検査や超音波検査を行います。これらの検査により、卵管閉塞の有無、閉塞した部位、重症度などが分かります。
全身の健康状態、不妊の原因となりうる因子について調べるため、血液検査・ホルモン検査を行うこともあります。
2手術日の決定・準備
卵管開口術の適応となれば、手術日を決定します。
手術にあたり、感染症の有無を調べる検査、抗生物質の内服などを行います。
3手術
局所麻酔または軽い鎮静の上、通水検査(通水法)・卵管形成術などの手術を行います。
4経過観察
出血、腹痛、感染の有無を確認します。出血や腹痛は、通常数日で治まります。症状が強く現れた場合などは、すぐにご連絡ください。
回復状況を見ながら、患者様と相談しつつ、今後の不妊治療の方針を定めていきます。
5不妊治療・妊娠判定
治療後すぐ、自然妊娠することもあります。
必要・ご希望に応じてタイミング法、人工授精などを行い、妊娠の判定をします。
卵管開口術のリスク・注意点
- 術後に軽度の腹痛や出血が起こる場合があります。また、稀に感染症を起こすことがあります。
- 重度の卵管閉塞や癒着がある場合、開口術では改善できないことがあります。
- 手術後も妊娠に至らない場合は、人工授精や体外受精などの次のステップが必要です。
卵管開口術の費用(保険)
| 手術内容 | 費用 |
| 選択的 卵管通水療法 |
約55,000円 (少なくとも 片側卵管開通時) |
|---|---|
| 約29,000円 (両側とも 開通しなかった場合) |
当院では可能なかぎり保険診療で行っておりますが、内容、回数、量によって保険がきかない場合がありますのでご了承願います。
保険診療費用は自己負担3割で計算しています。
自費費用は消費税を含んでいます。
同じ内容のものでも使用薬剤の量や検査回数による判断料の違いなどにより異なる料金になることがあります。
検査治療費用には毎回診療費用400-1,000円が加算されます。


